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那覇地方裁判所 昭和58年(ワ)409号 判決

原告

幸地英

ほか三名

被告

三星物産株式会社

ほか一名

主文

一  被告らは、各自、原告幸地日出夫、同幸地茂修及び同幸地雅秀に対し、各金二二万六七八三円及び各内金一九万六七八三円に対する昭和五八年九月二五日から各支払いずみまで年五分の割合による各金員を支払え。

二  原告幸地英の各請求並びに同幸地日出夫、同幸地茂修及び同幸地雅秀のその余の各請求をいずれも棄却する。

三  訴訟費用中、原告幸地英と被告らとの間に生じた分は原告幸地英の、その他の原告らと被告らとの間に生じた分はこれを一〇分し、その一を右原告らの、その余を被告らの各負担とする。

四  この判決は、第一項に限り仮に執行することができる。

事実

第一当事者の求めた裁判

一  請求の趣旨

1  被告らは、各自、原告幸地英に対し、金一八三三万七〇〇〇円及び内金一七六三万〇八〇〇円に対する昭和五八年九月二五日から支払いずみまで年五分の割合による金員を、原告幸地茂修、同幸地雅秀、同幸地日出夫に対し、各金六二八万四六六六円及び各内金六〇四万一三六六円に対する昭和五八年九月二五日から各支払いずみまで年五分の割合による各金員を支払え。

2  訴訟費用は被告らの負担とする。

3  第一項につき仮執行宣言

二  請求の趣旨に対する答弁

1  原告らの請求をいずれも棄却する。

2  訴訟費用は原告らの負担とする。

第二当事者の主張

一  請求原因

1  原告らの身分関係

原告幸地英(以下「原告英」という。)は、訴外幸地宏(以下「宏」という。)の妻であり、その他の原告は、いずれも宏の嫡出子である。

2  事故の発生

被告玉城栄則(以下「被告玉城」という。)は、昭和五七年九月一四日午前一時五〇分ころ、自家用普通乗用自動車(登録番号沖五六ち三三四号。以下「加害車」という。)を運転し、沖縄県宜野湾市字我如古四二〇番地の三大屋内張所先の国道三三〇号線を長田方面から真栄原方面に向かい時速約六〇キロメートルで進行中、同所を北から南に向け横断中の宏(当時五七歳)を、加害車前部で跳ね飛ばし、宏に頭蓋骨骨折、脳挫傷等の傷害を負わせ、同月二六日、午後九時五分ころ、同県具志川市字宮里二〇八番地三所在の沖縄県立中部病院において頭部外傷による一次性脳幹損傷により死亡させた。

3  被告らの責任

(一) 被告玉城

被告玉城は、加害車を運転していた者であるが、公衆電話ボックスを捜すことに気を取られて、自動車運転者に課せられている前方注視の義務を怠たり、その結果、前記道路を横断していた宏の発見が遅れ、本件事故を発生させたのであるから、民法七〇九条により本件事故による損害を賠償する責任がある。

(二) 被告三星物産株式会社(以下「被告三星物産」という。)

被告三星物産は、加害車を所有し、自己のために運行の用に供する者であるので、自動車損害賠償保障法(以下「自賠法」という。)三条本文により本件事故による損害を賠償する責任がある。

4  損害

本件事故によつて、宏及び原告らは次のとおりの損害を受けた。

(一) 原告英の積極損害 合計金五〇万六七〇〇円

(1) 治療費 金三二万九四一〇円

宏は、本件事故により県立中部病院で昭和五七年九月一四日から同月二六日までの一三日間入院し治療を受けたが、原告英は、治療費として金三二万九四一〇円を同病院に支払つた。

(2) 看護料 金三万九〇〇〇円

宏の前記入院期間中、妻である原告英が同人の付添看護をしたが、右看護料は一日当り金三〇〇〇円が相当である。

3,000(円)×13(日)=39,000(円)

(3) 入院諸雑費 金一万三〇〇〇円

原告英は、宏の前記入院期間中の諸雑費として一日当り金一〇〇〇円の支出を要した。

1,000(円)×13(日)=13,000(円)

(4) 文書料 金二八〇〇円

原告英は、宏の診断書作成等の文書料として金二八〇〇円を支出した。

(5) 葬儀費用 金五〇万円

原告英は、宏の葬儀のため金五〇万円の費用を支出した。

(6) 損益相殺

原告英は、(1)ないし(5)の損害について、自動車損害賠償責任保険(以下「自賠責保険」という。)から金三七万七五一〇円の支払を受けた。

(二) 宏の損害

(1) 休業損害 金二四万七〇〇〇円

宏は、本件事故当時、宜野湾市議会議員に立候補していた株式会社中央建設コンサルタントの代表者である訴外砂川晃章(以下「砂川」という。)の後援会の総括者及び右会社の相談役として月額五七万円(日額一万九〇〇〇円)の給与を支給されていたが、前記のとおり宏は一三日間入院し休業したのでその間金二四万七〇〇〇円の損害を蒙つた。

19,000(円)×13(日)=247,000(円)

(2) 逸失利益 金四〇〇四万二八〇〇円

宏は、昭和五七年一〇月一日から前記株式会社中央建設コンサルタントの副社長に就任することになつており、その役員報酬は月額金七〇万円と決められていた。

そこで、右収入から宏の生活費を四割控除し、同人の就労可能年数を死亡時の五七年から六七年までの一〇年間(新ホフマン係数七・九四五)としてその逸失利益を算出すると合計金四〇〇四万二八〇〇円となる。

700,000(円)×12(月)×(1-0.4)×7.945=40,042,800(円)

(3) 損害相殺

原告らは、(1)、(2)の損害について、自賠責保険から金二〇〇四万一六〇〇万円の支払を受けた。

(4) 慰謝料 金七〇〇万円

本件事故によつて宏の受けた精神的損害を慰謝するためには金七〇〇万円が相当である。

(5) 相続

原告らは前記のとおり宏の相続人でその相続分は妻である原告英が二分の一、子であるその余の原告らが各六分の一であるから、損益相殺後の宏の金二七二四万八二〇〇円の損害賠償請求権を次のとおり相続した。

原告英 金一三六二万四一〇〇円

27,248,200(円)×1/2=13,624,100(円)

その他の原告ら 各金四五四万一三六六円

27,248,200(円)×1/6=4,451,366(円)

(三) 原告らの慰謝料

(1) 原告英 金三五〇万円

原告英は、訴外人の妻でありその精神的苦痛を慰謝するには、金三五〇万円が相当である。

(2) その他の原告ら 各金一五〇万円右原告らは、訴外人の子であり、その精神的苦痛を慰謝するには、各金一五〇万円が相当である。

(四) 弁護士費用

原告らは本訴提起にあたり訴訟代理人を依頼し、その報酬として、(1)原告英は金七〇万六二〇〇円を、(2)その他の原告らは各金二四万三三〇〇円をそれぞれ支払う旨約した。

よつて、被告玉城に対しては民法七〇九条に基づいて、被告三星物産に対しては自賠法三条に基づいて、それぞれ、原告英は、請求原因4の(一)、(二)の(5)、(三)の(1)、(四)の(1)の合計損害金一八三三万七〇〇〇円及び弁護士費用を除いた内金一七六三万〇八〇〇円に対する本件訴状送達の日の翌日である昭和五八年九月二五日から支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の、その余の原告は、請求原因4の(二)の(5)、(三)の(2)、(四)の(2)の合計損害金六二八万四六六六円及び弁護士費用を除いた各内金六〇四万一三六六円に対する前記昭和五八年九月二五日からいずれも支払いずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の各支払いを求める。

二  請求原因に対する認否

1  請求原因1の事実は知らない。

2  同2の事実のうち原告主張の日時、場所において、被告玉城が加害車を運転して原告主張の事故を起こしたことは認めるが、その余の事実は知らない。

3  同3の事実について

(一) (一)の事実中被告玉城が加害車を運転していたことは認め、その余の事実は否認する。

(二) (二)の事実中、被告三星物産が加害車の保有者であることは認める。

4  同4の事実について

(一) (一)の事実中(6)の事実は認め、その余の事実は知らない。

(二) (二)の(1)の事実中、訴外人が、砂川の後援会から月額五〇万の手当を支給されていたことは認め、その余の事実は否認する。(二)の(2)の事実は否認する。(二)の(3)の事実は認める。(二)の(4)の事実は争う。〈二〉の〈5〉の事実は知らない。

(三) (三)の事実は否認する。

(四) (四)の事実は否認する。

三  抗弁

1  宏の過失(過失相殺)

本件事故は、信号機の設置されている横断歩道直近の事故であり、歩行者たる宏は、すぐ近くに横断歩道用押ボタン式信号機があるのに、それを利用することなく、車両用信号が青、歩行者用信号が赤のときに道路を横断していたものであつて、このような行為は被害者の過失として斟酌すべきである。

2  損害の填補(一部)

原告英に対し、被告玉城は、金三〇万円を、被告三星物産は金五万円を、それぞれ葬儀費として支払つた。

四  抗弁に対する認否

1  抗弁1の事実は否認する。

2  同2の事実は認める。

第三証拠〔略〕

理由

一  成立に争いのない甲第八号証、原告幸地英及び同幸地茂修各本人尋問の結果並びに弁論の全趣旨によれば、請求原因1(原告らの身分関係)の事実が認められる。

二  請求原因2(事故の発生)の事実のうち、原告主張の日時場所において、被告玉城が加害車を運転して原告主張のような事故を起こしたことは当事者間に争いがない。成立に争いのない甲第三号証、第一四、一五号証によれば、宏が原告主張の傷害を受けたこと及び原告主張の日時場所において原告主張の死因により死亡したことが認められ、右認定に反する証拠はない。

三  請求原因3(被告らの責任)につき判断する。

1  成立に争いのない甲第二号証、第四号証、第六号証、第七号証、第九号証、第一一号証、第二一号証及び被告玉城栄則本人尋問の結果を総合すれば、請求原因3の(一)の事実が認められ、右認定に反する証拠はない。右事実によると、被告玉城は本件事故による損害について賠償をすべき義務がある。

2  被告三星物産が加害車を所有し、自己のために運行の用に供していたことは、当事者間に争いがない。

右事実によれば、被告三星物産は、自賠法三条本文により本件事故による損害について賠償をすべき義務がある。

四  そこで、抗弁1(宏の過失)について判断する。

1  成立に争いのない甲第二号証、第四号証、第六ないし第九号証、第一一号証、第二一号証及び被告玉城栄則本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められる。

被告玉城運転の加害車と宏が衝突した地点の約五・九メートル東方には歩行者横断用押しボタン式信号機の設置された横断歩道があるが宏は、本件事故現場の道路北側に面し、右横断歩道から数メートルしか離れていないスナツク「白い扉」で飲酒後、帰宅するため同所を出たが、右横断歩道の歩行者用信号が赤色を表示しているにもかかわらず、道路北側から南側に横断しようとして右横断歩道の西端から約五・九メートルの道路上に進出し、本件事故に遭遇した。

以上のとおり認められ、右認定に反する証拠はない。

2  右のような場合、宏としては、直近に存した横断歩道を歩行者用信号機の表示に従つて歩行をなすべきであるのにこれを怠り、本件事故にあつたのであるから、宏の右行為は被害者の過失として損害賠償額の算定にあたり斟酌すべきである。宏の右過失の内容・程度・本件事故の態様などの諸事情を斟酌すると宏の過失の割合は、三割と認めるのが相当である。

五  同4(損害)について判断する。

1  原告英の積極損害 〇円

(一)  治療費 金三二万六四一〇円

成立に争いのない甲第一八号証によれば、原告英は宏が本件事故により昭和五七年九月一四日から同二六日まで県立中部病院に入院した際の入院治療費として合計金三二万六四一〇円を同病院に支払つたことが認められ、右認定に反する証拠はない。

(二)  付添看護料 金三万九〇〇〇円

弁論の全趣旨からすれば、宏は前記入院期間中付添看護を必要とし、原告英がその付添看護をしたことが認められ、それに相応する看護料は一日当り少なくとも金三〇〇〇円と認めるのが相当である。

3,000(円)×13(日)=39,000(円)

(三) 入院諸雑費 金一万三〇〇〇円

弁論の全趣旨によれば、原告英は、訴外人の前記入院期間中、諸雑費を支出したが、その額は一日当り少なくとも金一〇〇〇円であると認められる。

1,000(円)×13(日)=13,000(円)

(四) 文書料 金二六〇〇円

成立に争いのない甲第一六号証、第一七号証、第一九号証及び弁論の全趣旨を総合すると、原告英は文書料として金二六〇〇円を支出したことが認められた右認定に反する証拠はない。

(五) 葬儀費用 金五〇万円

原告幸地英本人尋問の結果及び弁論の全趣旨を総合すると、原告英は宏の葬儀費用として約一〇〇万円を支出したことが認められるが、宏の地位、年齢などを考慮すると、本件事故と相当因果関係のある葬儀費用は金五〇万円と認めるのが相当である。

(六) 過失相殺

右のとおり、原告英が本件事故により支出した合計金額は、金八八万一〇一〇円であるところ、前記四に認定の割合で過失相殺した金六一万六七〇七円が本件事故による原告英の積極損害である。

(七) 損益相殺

原告英が、右損害について、自賠責保険から金三七万七五一〇円の支払を受けたこと、また、原告英が被告らから葬儀費として合計金三五万円を受領したことは当事者間に争いがない。そうすると、原告英の積極損害については全て賠償済みであるということになる。

2  宏の損害 金一二二八万七二九五円

(一)  休業損害 金二一万六六五八円

宏が、本件当時、宜野湾市議会議員に立候補していた砂川の後援会の参謀をし、右後援会から月額五〇万円(一か月を三〇日として計算すると、日額一万六六六六円 500,000(円)÷30(日)=16,666(円))の支給を受けていたことは当事者間に争いがないが、宏が株式会社中央建設コンサルタントの相談役として給与等を受けていたことについては、これを認めるに足る証拠はない。

そうすると、宏が本件事故により受けた休業損害は合計金二一万六六五八円である。

16,666(円)×13(日)=216,658(円)

(二)  逸失利益 金一四三八万六六二四円

訴外人の逸失利益の基礎となる収入につき判断するに、成立に争いのない甲第三号証、第二二号証、第二三号証の一、二、第二四号証、証人砂川晃章の証言により真正に成立したものと認められる甲第二〇号証、証人砂川晃章の証言、原告幸地英及び同幸地茂修各本人尋問の結果を総合すると、次の事実が認められる。

宏は、沖縄県宮古支庁農林水産課に課長として昭和五七年三月三一日まで勤務し、月額四三万三八三〇円の給与を支給されていたが、同日付けで右支庁を退職し、砂川が宜野湾市議会議員選挙に出馬するにあたり、その後援会の参謀として、同年四月から稼働していた。

砂川は、宏に対し、前記選挙が終わつた同年一〇月から砂川が代表取締役を勤める株式会社中央建設コンサルタント(以下「中央コンサルタント」という。)の副社長への就任を勧め、宏もこれを承諾していたが、砂川はそのことを中央コンサルタントの他の役員にははかつていなかつた。

以上のとおり認められる。証人砂川晃章の証言中右認定に反する部分は措信せず、前掲甲第二〇号証によつてはまだ原告主張事実を認めるに足りず、他に右認定を覆すに足りる証拠はない。

そうすると、宏が本件事故により死亡した後である昭和五七年一〇月から中央コンサルタントの副社長として勤務し、以後給与として月額七〇万円を得られるはずであつたとの原告らの主張は極めて不確定な事実に基づくものであつて、これを宏の逸失利益の算定の基礎とすることは相当でなく、また、市議会議員選挙の際の後援会参謀として得ていた手当についても、この手当が一時的な、短期間の収入であることからして、これを逸失利益算定の基礎とすることは相当でない。

従つて、宏の逸失利益の算定にあたつては、その基礎となる収入は、昭和五七年賃金センサス男子労働者学歴計の収入によるのが相当であるが、それによると宏の年収は金三〇一万八〇〇〇円となり、これから生活費として四割を控除することとし、宏は本件当時五七年であり、就労可能年数は一〇年(これに対応する新ホフマン係数七・九四四九)であると認めることができるから、以上の事実から宏の逸失利益の現在額を算定すると金一四三八万六六二四円であると認められる。

3,018,000(円)×(1-0.4)×7.9449=14,386,624(円)

(三) 過失相殺

宏が本件事故により受けた休業損害及び逸失利益の現在高は、前記(一)、(二)の合計金一四六〇万三二八二円であるところ、前記四に認定の割合で過失相殺した金一〇二二万二二九七円が、本件事故による休業損害及び逸失利益である。

(四) 慰謝料 金二〇〇万円

宏が本件事故により受けた精神的苦痛を慰謝するには、前記四に認定の過失の割合その他諸事情を考慮して、金二〇〇万円が相当であると認められる。

3  相続

原告らは、前記一のとおり宏の相続人であり、その損害賠償請求権合計金一二二二万二二九七円を相続分(原告英二分の一、その余の原告ら各六分の一)に応じ次のとおり、相続した。

(一)  原告英 金六一一万一一四八円

12,222,297(円)×1/2=6,111,148(円)

(二)  その他の原告ら 各金二〇三万七〇四九円

12,222,297(円)×1/6=2,037,049(円)

4  原告らの慰謝料

原告らが本件事故により受けた精神的苦痛を慰謝するには、前記四に認定の過失の割合その他の諸事情を考慮して、次のとおりであると認めるのが相当である。

(一)  原告英 金三五〇万円

(二)  その他の原告ら 各金一五〇万円

5  損益相殺

以上のとおり、原告らの本件事故による損害賠償請求権は、原告英につき合計金九六一万一一四八円、その他の原告らにつき各合計金三五三万七〇四九円であると認められるところ、原告らは、自賠責保険から金二〇〇四万一六〇〇円を受領したことを自認し、特段の事情のない限り、右金員をその相続分(英につき二分の一、その余の原告らにつき各六分の一)に応じ、取得したものと推認しうる。

そこで、右に基づいて損益相殺をしたうえ、原告らの損害の残額を算定すると、原告英については、残損害額はなく、その他の原告らについては、各金一九万六七八三円となる。

原告英 9,611,148(円)-20,041,600×1/2=-409,652(円)

その他の原告 3,537,049(円)-20,041,600×1/6=196,783(円)

6  弁護士費用

原告らが本訴の提起にあたつて弁護士に訴訟委任をしたことは当裁判所に顕著な事実であり、その報酬として請求原因4の四記載の金額を支払うことを約したことは、弁護の全趣旨によりこれを認めることができるが、前記のとおり、原告英の被告らに対する損害賠償の請求は理由がなく、従つて、訴訟代理人として弁護士を依頼した費用は、本件事故と因果関係のないものであり、その他の原告らについては右費用中各金三万円が本件事故による損害として相当である。

7  まとめ

以上のとおり被告らに対し、原告英を除くその余の原告らが本件事故の損害として賠償請求しうるのは、各金二二万六七八三円であると認めるのが相当である。

六  以上の次第であるから、被告ら各自に対する本訴請求のうち、原告幸地日出夫、同幸地茂修、同幸地雅秀につき各金二二万六七八三円及び弁護士費用を除いた内金一九万六七八三円に対する本件訴状が送達された日の翌日であることが記録上明らかな昭和五八年九月二五日から支払ずみまで民法所定年五分の割合による遅延損害金の支払いを求める限度で理由があるからこれを認容し、右原告らのその余の請求及び原告幸地英の請求は理由がないからいずれもこれを棄却し、訴訟費用の負担につき民訴法八九条、九二条、九三条を、仮執行の宣言につき同法一九六条を各適用して主文のとおり判決する。

(裁判官 比嘉正幸 飯島悟 野村尚)

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